濃茶to恋茶
四方捌きを見ていて思っていたのだけれども
落として張っての繰り返し まるで恋だね
ドキドキがバレないように落ち着いて捌かなきゃ
茶入回しを見ていて思っていたのだけれども
落ちないように回している まるで恋だね
はたして僕が回しているのか
それとも回されているのかは誰にもわからないのさ
中蓋を見ていて思っていたのだけれども
冷めないように蓋をする まるで恋だね
釜と一緒に気持ちにも蓋をして
この想いを水に流そうか
練って練ってお茶を練って
ダマを残さないように
練って練って策を練って
後悔が残らないように
お茶はいくらでも追杓できるけど
この気持ちはちょっと追杓したくらいじゃ薄まらないのさ
この気持ちは薄茶じゃなくて 恋茶
いつか君に味わって欲しい 恋茶
解説
これは今まで自分が作ってきた中でも、断トツで気に入っています。そして断トツで気持ち悪がられていました。この一件のおかげで、僕がいいなと思ったことは、だいたい引かれるということがわかりました。
茶道では薄茶と濃茶というものがありますが、その薄いと濃いというものを愛情の薄さ、濃さに表せないかと思い作りました。
そして作っていくうちに、
あ、そっかこれは濃茶じゃなくて恋なんだ
と自分で感じたことを覚えています。
こういう一瞬の閃きというか直感というものは、ずっと覚えているものですね。